「売上が上がらないのは、社員のやる気と能力が無いからだ」
「売上が下がったのは、社員の対応が悪かったからだ」
「売上が伸びないのは、社員の営業が怠慢だからだ」
…私が日頃お付き合いさせていただく経営者にはこのような事を面と向かっておっしゃる方はいませんが、もしかするとこんな風に思っている方って世の中に多いのかもしれません。
なぜそのように思ったのかというと、経営者からいただくご相談は、「どうしたら社員を教育できるのか」とか、「どうすれば新商品が売れるのか」という前向きな話題が多く、世の社長は常に社員の成長や事業の発展を願うものなのだな~と常々感じているのですが、たまに部長やマネージャーなどの社員さんからご相談を受ける機会があると、往々にして出てくる言葉が冒頭のセリフで、「社長は私達に対して多分このように思っていると思います」とおっしゃるのです。
なるほど、不思議ですね~。一体どこでどう変換されてしまうのでしょうか?
多くのオーナー経営者は、そのバツグンの人間力と営業力で会社を大きく成長させてきた経験から、もしかすると他人も頑張ればある程度はできると勘違いしてしまうのでしょうか。また、きちんとお給料を払っているのだからその分働いてもらわなければ"損“という感情も働くのかもしれません。そういった勘違いや感情から、「もっとやる気を持って仕事をして欲しい」、「もっと顧客に喜ばれる対応を」、「もっと効率の良い営業を」と、もっともっと…と望んでしまうのかもしれません。
しかし、顧客の層やニーズが大きく変化しどの企業も“差別化”を唱えて、今や既存の顧客を守るだけでも大変な時代になりました。その中にあって、やる気やモチベーションだけで売上が上がる時代ではなくなったし、社員に丸投げの営業戦略や顧客対応では通用しなくなってきていることを肌で感じている方も多いと思います。
例えば、これだけインターネットが普及すれば通信販売を考える競合も増えるし、「ものが売れない時代だから」と顧客満足や迅速なサービス、コンサルティングで差別化を売りにしようとしても、ほとんど大差はありません。これだけ情報が溢れかえっている現代、自分の会社が良いと思ってやっていることは、ほとんどの場合他社もやっているからです。
そのような厳しい経営環境の中、本当の意味で顧客から選んでもらえる企業に成長させるためには、御社ならではの何かが伝わらなければ真の差別化はできません。それをうまく伝えることこそが営業であり、それが理解できなければ顧客が満足するサービスの提供はありません。
では、「御社ならではの何か…」とは一体何か?
それは経営者自らのこだわりであり信念です。
ソフトバンクの孫社長やユニクロの柳井社長、楽天の三木谷社長など国内でも有名なオーナー経営者は皆さん揃って『この社長だから』が明確です。
モノが溢れ、人々がモノを買わない時代。
一方で、高くても行列ができる時代。
『この社長だから…』がハッキリしないと会社は大きく成長できません。
経営者の皆さま。社員のやる気や能力、喜ばれる顧客対応、売上を伸ばす営業戦略は、社員から生まれてくるものではありません。社員のやる気の源は、『この社長だから…』の魅力ですよ。