「ベトナム人は勤勉で真面目だから日本人より優秀だ!」
こうお考えの方は中小企業の経営者に増えてきています。弊社はベトナム高度人材の紹介を行っていますからこの言葉に同意したいところですが、同意はできません。
なるほど、ベトナム人の特性に勤勉で真面目というものはあります。それでも一般論に過ぎず、全員に当てはまるものではありません。そう、私たち日本人が全員勤勉で真面目でないように。
実はこの考え方が、ベトナム高度人材の紹介で失敗する企業の典型的なものなのです。なぜなのでしょうか。
今回はベトナム高度人材の紹介を生かすために、行いたいことについてお話していきます。
■ベトナム人が親日の理由
ベトナム人は親日です。といっても、あまりにも漠然としているため日本のどこに好感を抱いてくれているか分かりませんよね。ここで参考にしたいのが、内閣府が平成30年2月に発行した『クールジャパンの再生産のための外国人意識調査』です。
この調査報告では、様々な国の人たちが日本の魅力を語ってくれています。特に注目したいのは、最終項目の大陸別アンケートです。ベトナムはアジアエリア16か国中2位の回答者数16.98%ですから、ベトナム人の志向を知るのに十分な資料でしょう。
項目の中に「日本に興味を持ったきっかけ」というものがあります。アジアエリアのトップ3は以下のようなものです。複数回答可能でした。
- マンガ・アニメ・ゲーム 60%
- 音楽 30%
- 観光 00%
1位は堂々のマンガ・アニメ・ゲームです。2位以下を大きく引き離しています。魅力的な創作の世界に魅了され、日本に興味を持ってくれる人が多いようです。
ベトナムでも『ドラゴンボール』や『ドラえもん』は放送されていますし、スマホゲームの『ポケモンGO』も大人気。雑貨店ではマンガやアニメ、ゲームのキャラクターグッズで溢れています。納得の結果です。
■ベトナム人の誠実さが分かるアンケート
内閣府の『クールジャパンの再生産のための外国人意識調査』から分かることはもう一つあります。それはベトナム人の誠実さです。先述した通り、ベトナムはアジアエリアでの回答者数が第2位でした。ところが、在留外国人の多さでいうとベトナム人は平成30年6月の時点で第3位なのです。
通常なら、人口の多さに応じてアンケート回答者も比例するはずです。が、在留外国人数1位の中国2位の韓国の回答者数は低く、16か国中9位と10位なのです。どちらの国も日本への好感度が低い国ですから、日本政府が行う調査には参加しづらかった可能性が考えられます。
ここから見えてくることは、ベトナム人は日本政府が行う調査への参加に抵抗がなかったということです。日本が「教えて欲しい」と頼んだ時は素直に対応をしてくれる。この点にもっと注目したいものです。
ちなみに、『外国人意識調査』回答者数第1位はタイでした。タイは日本の皇室と密接な関係の王室があり仏教国ですから、日本に特に親近感を抱いてくれているのかも知れません。
■素直だからこそ起きる現実との乖離
日本のマンガやアニメ、ゲームはベトナムに限らず、世界中で大人気です。これがきっかけで日本に興味を持ち来日をすると、創作の世界と現実のギャップに苦しむことになります。創作の世界ではいつも優しい人たちがニコニコ笑っています。特に学園モノの作品では、きらめく青春が描かれています。
しかし、現実はそうもいきません。つらいことの連続です。礼儀正しく優しいと思っていた日本人は、一たび身内になると厳しく接してきますし公共マナーも複雑。これで心が折れてしまう外国人はとても多いのです。
これは創作の世界で日本を知り、創作物を通し日本を理想化してしまった結果です。創作の世界を素直に受け止めてしまっている。一昔前は「サムライ・フジヤマ・ゲイシャ」でしたね。これが現代では「マンガ・アニメ・ゲーム」に置き換わっているに過ぎません。
日本に住む私たち日本人から見ると、とてもバカげているように見えるでしょう。ですが、ちょっと立ち止まって考えてください。私たちも外国に対し理想化していないかを。
■日本人が抱く「ベトナム人は勤勉で真面目」という幻想
日本でのベトナムのイメージはどのようなものでしょうか。美味しい料理でしょうか、それとも美しい工芸品でしょうか。その中でも特に中高年世代に印象深いのは、ベトナム戦争ではないでしょうか。
ベトナムは巨大国アメリカと互角に戦い、遂には勝利をおさめました。同じくアメリカと戦った日本からすると憧れの眼差しで見てしまいます。この勝利により、ベトナム人の強さや賢さがクローズアップされていったように感じます。勤勉で真面目だからこそ勝てたとも受け取った人もいるはずです。
ここで少し考えてみてください。このベトナム人像は戦時下という異常事態の中、かたどられたものです。戦時下は「勝利」という一つの大きな目標があるため、国民は一丸となって戦います。でも、今は戦時下ではありません。
現在、来日する若者の多くは、ベトナム戦争以後に生まれた人たちです。もちろん、両親や祖父母から戦争の話は聞いているでしょうが、彼ら自身は体験していません。平和な時代に生きています。
そんな彼らにベトナム戦争時にかたどられたベトナム人像を押し付けるのは、いかがなものでしょうか。これはマンガやアニメで日本を理想化する外国人と変わりない行動です。
■理想と現実のギャップを埋めるところから国際交流
日本とベトナムは飛行機で5時間かかる距離にあります。地図で見ると近いように感じますが、実際はとても遠い国。そうなると、様々な違いが生じます。今回取り上げたアニメなど創作の世界と現実の違いは一例です。
このギャップを埋めることが、ベトナム高度人材の受け入れ第一歩です。日本とベトナム、双方の理想を押し付け合うのではなく、歩み寄り互いに理解しあうことが大切です。
ステレオタイプな「勤勉で真面目なベトナム人」ではなく、目の前にいる一人の人間を見てこそベトナム高度人材が企業で生きるのです。
もし、ベトナムについて分からないことがあれば、私に声をかけてやってください。ベトナムには年に何度も赴き、「今」を見てきています。きっとお役に立てるはずです。
ベトナムは学ぶべきことが多い国です。きっとあなたの会社の成長のきっかけになるでしょう。
最後まで読んでくださり有難うございました。
あなたの一日が素晴らしいものでありますように。
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