先日、ある金融機関の支社長が私のところに訪ねていらっしゃいました。初めてお会いする方です。取引先からのご紹介だったこともあり、とても和やかな雰囲気の中で会話が弾んで行ったのですが、いつの間にか話題は最近の若手経営者の話しに。
その金融機関では、融資先の新規開拓と既存の取引企業へのサービスを兼ねて、以前から異業種交流会や情報交換会を定期的に行っているとのこと。特に50歳以下の若手経営者や後継者を対象にした会には毎回力を入れているそうです。その様子について聞いてみたところ、やはり私が日頃現場で感じている事と同じ感想が・・・。
「同じ若手でも、創業社長と後継社長では大きく意識が違いますね。」
以前お付合いの合った会社の話しですが、都会の大企業で働いていた息子さんを呼び戻して後継者として入社させ、そのせいで社内の空気が一変してしまった・・・という様子を見たことがあります。息子さんは俗に言う“エリート社員”としてバリバリ活躍していたところ、お父さんから説得され、それに応じて仕方なしに帰ってきた・・・という気持ちが全身から溢れ出てしまっているような方で、その心は態度や言葉の端々に表れてしまい、社員達が彼の事を陰で“なんにも専務”と呼んでいたのも聞いたことがあります。
大学では経済学を学んでいだということでしたが、いざ会社に入ってみると、わがままをいう取引先や何度言っても聞いてくれないパートのおばちゃん達を大勢相手にしなければならず、教科書で習った理屈など一切通用しない生きた現場だという事実を突きつけて彼を悩ませ続けました。
また、毎月顧問料を支払っている税理士からは、月々「これだけ黒字でした」「これだけ残りそうです」と収益の報告は上がってくるものの、自分がどう動けば業績が上がるのか全くわからない状態。そのイライラや不安は横柄な態度という形で社員達の前に表れ、会社の空気を暗く重いものにしてしまっていたのです。
こんな状態のまま取引先に出向き、何か一つでも仕事をもらって帰ろうとしたとしても、何を伝えたら良いのかわからない。自分の会社に何が出来るのかわかっていない。他社との違いを聞かれても何と答えたら良いのかわからない。そんな彼に出来る事と言えば、サラリーマン時代に培った「商品売り」だけでした。
しかし、大企業のエリートという肩書きのもとに、優良な取引先に対して間違い無いものを売る・・・ことは出来ても、名もない中小企業の“なんにも専務”が、その特徴の一つも説明できない商品を売ろうとしたところでそもそも取り合ってはもらえないのです。せいぜい父親である社長の付合いで注文を出してくれる会社があるくらいでしょうか。
創業者は社長の存在がブランドでしたが、次の後継者は何をブランドとして生きていくのか?
これから何を売って行けば良いのか?
経営者の皆さま、こうなる前に自社のブランディング、自社の営業体制、今一度考えてみませんか?