応援コラム

新規開拓営業を楽しむコツとは?

20160901

「先日、ウチの社長と一緒にお客様を訪問したのですが、とにかく仕事に関係無い話しばかりするんですよね。私としては早く本題に入りたいのに…。せっかく経費を掛けて2人で行っているワケですから、1件でも仕事を決めて帰らなければと思うのは当然だと思いませんか?」

 

ある営業部長さまからのご相談です。新規の販路開拓のため、最近は地方の企業など遠方に出向いて行く機会が増えたそうです。1件でも多くお取引いただきたいと気合が入る中、移動の経費も積み重なれば決して馬鹿にならない金額になるでしょうし、ましてや、社長と部長が出向いて行って手ぶらで帰ってくるワケにはいかないんだ…だから一刻も早く仕事につなげたいんです!とおっしゃる気持ちはとてもよくわかります。

 

この部長さまは長く現場でものづくりを専門にやってきた、いわゆる“職人さん”なのですが、その人当たりの良さと責任感の強さで数年前から営業部を任されていらっしゃるそうです。そんな彼が自己流に始めた営業スタイルは?と聞くと、先ほどのお話しにあったように、挨拶もそこそこに早速仕事の話しを始める、商品パンフレットを広げて自社の得意な分野について一生懸命説明する、納期や金額の相談も自分が窓口になってできますよ!と“押す”…のだそうです。現場のことが良く分かるからこその営業手法のようです。聞くと、彼のおかげで売上も順調に伸び、開拓も進んでいるのだとか。そして次なる課題は、更に拡大するための“営業マンの育成”なのだそうです。

 

そこで浮上してきたのが、訪問先での営業スタイル…対話重視型の社長と、効率優先型の部長は真っ向から対立する形になってしまったのだそうです。その必死な表情から、お気持ちは十分に伝わってきたのですが、私個人的には、営業現場に限らず仕事のやり方として「直接対面」と「しっかり会話」を最優先するタイプなので、文句無しに社長さまのスタイルに賛成です(笑)

 

一昔前と比べて、メールやLINEなどの便利な通信ツールが充実し、また、テレビ電話や動画・ネット講習などを活用することで、直接会わなくてもできる仕事が増え、会話をしなくても相手に伝わる手段は画期的に増えました。私もそれらの便利ツールはもちろん活用しますが、それは「同業者に対して」優先的に使用するようにしています。仮に顧客に対してメールなどを使う場合でも、あくまでも直接お会いした後のフォローやしっかりと会話するための時間や場所の設定のために使用するだけです。そのツールのみで用件を済ませることはあり得ません。何故なら…そんなことをしたって、先方は勿論、自分自身が楽しくないからです。

 

「仕事だろ?楽しい必要があるのか?」と思われる方もいらっしゃると思いますが、私はお互いに一緒にいる時間が楽しいことをとても大切にするようにしています。それは、仕事とはお互いにとってメリットとなる関係性を築いていく必要があるし、なるべくトラブル無くスムーズに進めて行くことが求められます。特に初めてお付き合いが始まる時こそ、互いの事を知り、相手の特性を理解し合うことで、距離を縮めたり足りない部分を理解したりすることができるのです。何より、これから長く付き合いたいと思う相手かどうかを見極める必要があるのです。そのためには、お互いに信頼しあえる関係が築けるかどうかの入り口は非常に大切な部分であると言えます。“楽しい”と感じることはその大切な判断基準の一つだと思っています。

 

そこを端折って、「まずは製品の説明から…」とやってしまうと、「そこまで言うのなら、じゃあ、他社よりもどこが優れているんだ?一体何ができるんだ?他はもっとマケてくれるぞ」などと言われてしまうのです。ここが突破できる営業マンや、価格の交渉ができる人であれば上手に切り抜けるのでしょうが、残念ながら大方の営業マンはここで撃沈されてしまいます。

 

そんな営業マンのスキルや経験の格差を埋めるために私がオススメしていることは、「営業しなくても売れる体制づくり」です。「営業しなくても?」とクビを傾げたくなる方も多いと思いますが、昔から「交渉事は可能な限り自分の有利な場所で行うべき」と言われています。相手の会社に出向くよりも、慣れ親しんだ自分の会社の応接室に来てもらった方が圧倒的に有利な空気が作りやすいからです。

 

自社の工場や応接室に来てさえもらえれば、例えば、営業マンのトークだけでは到底伝えきれない会社の清潔さや明るさ、積極的な姿勢などを一瞬にして伝えることができるし、写真では伝わらない製品の質感やスケールの大きさを直に見て肌で感じてもらうこともできます。毎日実施している朝礼や勉強会、他のお客様への電話応対の様子などを見てもらうことで、それはイコール会社を深く知ってもらうことになり、安心や信頼につながるのです。私達人間は、「知らない」ことに対してとても不安を覚えます。言葉や写真だけではいくらでもごまかしがきくし、現実味に欠けてしまいます。そんな相手の不安を払拭し、取引をしよう!と決断してもらうためには営業マン任せの手法に頼るのではなく、会社全体で「直接対面」と「しっかり会話」を実現させる体制をつくっていくことが近道なのです。ただし、ここで重要なことは、それらをしっかりと伝えるための導線と魅せ方が考えられていることです。何の仕掛けも無い状態でただお客様をお呼びしてしまっては、逆に“ガッカリさせる”ことに繋がりかねないからです。

 

経営者の皆さま。御社の営業スタイルは対話重視型ですか?それとも効率優先型ですか?その選択を現場任せにしていませんか?お客様との心の架け橋をつくり、こちらから営業しなくても売れるための仕掛けづくりは経営者の仕事なんですよ。

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