応援コラム

自分の想いが社員に届かない、そんな社長へ

 

大切な友人に対して、また、恋愛・親子関係でも、相手に自分の気持ちが伝わらないって、とても切ないですよね。自分はこんなに相手のことを思っているのに、なぜ伝わらないんだ!?…と、思いが強い分だけそれが怒りや悲しみにかわって苦しい思いをしたりして。人間の心は複雑で厄介なものですね。

 

これは会社においても同じだと思います。

 

会社を今よりもっと成長させたい…

社員の営業をもっとラクに、楽しいものにしたい…

もっと儲かる会社にしてみんなを幸せにしたい…

 

そんな風にお考えの社長は多いと思います。そのために、日々、社員には大切なことを教えているし、わかるまで丁寧に…と、根気強く繰り返し伝えているけどなかなかわかってくれないんだ、そんな悩みをお持ちかもしれません。これは、私がご相談いただく会社の多くが抱えている問題で、決して特別なことではありません。「よくあること」なのです。

 

例えばこのようなご経験はありませんか。

 

会議中、自分としてはとても良いと思うアイデアが浮かび、「こんなことをやってみたらどうだろう?」と社員に提案したのに、社員は無反応で沈黙が続く…。ようやく口を開いたかと思えば、「でも…」で始まるマイナスな発言ばかり。少しイラっとしつつも「あ~いかんいかん」と自分の感情を抑えつつ社員の成長を願って「じゃあ、どうしたらいいと思う?」と聞くと、また無言になる。「これじゃ、全然会話にならん…」と諦める。

 

また別の日には、

 

毎週月曜日の全体朝礼で、「自分の成長にもっと貪欲になってほしい」「夢を持って生きよう」「自分の頭で考えることが大切だ」とみんなに話してみるものの、社員は下を向いたまま。朝礼が終わるといつものように現場に行って決められた仕事をする。いつまで経っても変わらない社員の姿勢にがっかり。自分が言ったことは理解してくれているのだろうか、理解できないのか、難しいのか、それともやる気がないのか、わからん。

 

このような状態が新人や若手社員ならまだしも、部門のトップを担う責任者だったとしたら、「お前たちはそんな風に働いていて楽しいのか?」とつい言いたくなりますよね。そのような感情をこれまで何度も抱いてこられたのではないでしょうか?自分の想いはなぜ社員に伝わらないのか?そう思うこと自体は全く悪いことではありません。その感情は、社員一人ひとりの成長を強く願っている証拠だからです。「もっと成長してほしい!」「もっと楽しく働いてほしい!」と思い大いに期待しているからこそ、現状とのギャップに苦しんでしまうのです。ただ、その「わかってほしい」と強く思う気持ちが、余計に“伝わらない”を生んでしまっているのです。あの手この手で考えを伝えようと努力しているそのことが、社員の迷いや不満を生んでいるからです。

 

よくあるケースが、社内の出来事(電話対応や作業手順などのちょっとしたことから大型契約受注やクレームなど何でも)とにかく気づいたことを気づいた時に話し出したり、自分が参加したセミナーや講演会で聞いてきた「偉人の名言」とか「他社の事例」などをメールで一斉送信したり、あらゆる手段で社員に伝えている社長。この気持ち、めちゃめちゃわかります。私も、社内のちょっとしたことに気が付くアンテナはかなり高く敏感な方なので、とにかく良いことも悪いことも目につくのです。また、これまで相当数の経営者セミナーや講演会に参加したり、各業界の一流と呼ばれる方々とお仕事をさせていただいたりする機会もありましたので、その度に心が震え、感激し、「ああ、私たちももっと高みを目指したい!」と最高のモチベーションになったものです。その、気づいたことや感じたことをそのまま社内に投げかけるということを何度もやった経験がありましたが、やはり社員の態度はどこか他人事でした。

 

この私の経験を分析してみると、まず社内の気づいたことを気づいた時に話し出す件。確かに、社員に注意するタイミングは非常に大切で、後になってまとめて指導するよりはその都度気づいた時に声掛けする方が効果的なことも多々ありますが、ここで大切なことは、常に指導の軸が一貫していることです。我々中小企業は、社員の教育を外部に頼らず社内のOJT(職場内訓練)で行う会社がほとんどです。その際、指導している幹部やリーダーに教育経験を持たない者も多く、もしかすると社長ご自身もそうかもしれません。すると、大切だと思うことを片っ端から伝える、思いついた時に伝える、基本ではなく応用(ケースバイケース、このお客さんはね…的なこと)から先に伝えることをしてしまいがちです。

 

仮にこの指導が一貫していない場合、「あの時はこう言われた」「あの先輩はこうしろと言った」「社長はこの前と言うことが違う」といった社員の迷いや不満を生んでしまいます。この場合、まずやるべきことは、「軸をつくってシンプルな言葉で伝える」ことです。目指すべき社員像、社内の育成方針など、会社の軸となるものをつくって、それをなるべくわかりやすく伝わりやすいシンプルな言葉で表現することです。「私たちの会社が求める社員とは?」と聞いたら、「〇〇な社員!」と誰もが答えられることが理想です。

 

そしてもう一つ、「偉人の名言」や「他社の事例」などを熱く語ってしまう件。これは、「社員たちが気づくように…」「あの社員の行動が変わるように…」と、自分以外の第三者の有名な方の言葉や成功事例などを使って何とか伝えようとしている訳ですが、皮肉なことにその行為がむしろ社員の気持ちを冷めさせてしまっているのです。私も会社員経験があるのでわかりますが、社長がこのような話を持ち出した時に社員は何を考えているかというと、「やればできる?今の自分たちではダメだというのか?」「他社の成功事例…あ~また比較されている」ということです。これでは、せっかくの社長が伝えたい大切なことが伝わらないどころか、逆効果になってしまいます。あなたが、この偉人の名言や他社の事例から何を感じ取り、何を考え、自分ならどうする、私たちの会社は何をするべきかをどのように感じ、考えたのかをご自身の言葉で話すことです。大切なのは「他人の言葉や他社事例を自分ごととして伝え、自分ごととして受け取ってもらう」ことだからです。

 

社長の言葉は、社員や会社の未来を育てる本当に大切なものなのです。あなたが日頃何気なく発している口癖や表情、行動は全てあなたの「言葉」として周囲に伝わり、それが会社の未来をつくっているのです。あなたの「言葉」は、どのように伝わっているでしょうか?

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