先月の朝日新聞の全面広告で話題になったという「電話ハラスメント」。私は初めて耳にする言葉ですが、なんでも、「電話番は新人の仕事だ」という昔から残る習慣は、電話に慣れていない若い世代にとっては相当ストレスを感じてしまうのではないか?ということなのだそうです…。確かにテレワークが進む中、電話を取るだけのために出社するのもどうかとは思いますが、電話番がハラスメントになるとは時代も変わったものです。つい先日、新入社員研修で散々電話対応・来客対応の実践トレーニングをしてきたばかりの私はこのニュースを聞いて耳を疑いました。
他にも、免許を持たない若者をバカにする「免ハラ」や、「仕事はエンジョイしてやろう!」を押しつける「エンハラ」なんていうものまでも登場しているようです!?まあ、これをまともに受けるつもりはありませんが、大切なことなので私なりに伝えたいと思います。
そもそも電話対応を新人がやる目的は、
①仕事を覚える。
②自分の役割(居場所)をつくる。
③新しい環境に足を踏み入れる。
の3つだと考えています。
まず、
①仕事を覚える…ですが、新入社員として入社するとどこの会社もまずは研修から始まると思いますが、文字で読んだだけ、言葉で聞いただけでは、「情報」としてはインプットされても、「自分の仕事」としては理解できません。実際の現場で緊張感を持って電話に出ることで自分事としての実感を持つことができます。また、研修の時には「仮」で設定されていたお客様が実際に電話を掛けてきて色々な質問や注文、クレームを言ってくることで単なる「情報」は現実味を帯び、仕事への責任感を感じるようになります。もちろん初めからうまくできる訳はありませんが、そんなことは周囲も織り込み済み、思い切り挑戦して欲しいと思います。
②自分の役割(居場所)をつくる…新人の頃はできる仕事がほとんどありません。もちろん何かを任されることも無いし、誰かから頼りにされることも無い、自分の存在価値とか存在意義とかとは全く縁遠い世界です。周りを見ても分からないことだらけ、率先して何かをしたくても出来ることが何ひとつ無い、そんな中で「電話に出る」ことは唯一新人にもできる仕事なのです。また、「電話に出る」ことは自宅などでも練習することができますので、明るい対応、気持ちの良い対応、丁寧な言葉づかいなどをマスターしていけば、先輩にも負けない電話対応ができるようになり、「社内で一番」を目指すことも可能です。仕事も居場所も自分でつくるもの、そう教えるのにはピッタリだと思います。
③新しい環境に足を踏み入れる…学校を卒業して会社に入るということは、これまでの学校とか友達・家庭といった限定的な人間関係を飛び出して、全く新しい環境に飛び込むことになります。今までの、ある意味守られていた空間から自分で考え行動しなければならない場所に来たわけで、その意識の切り替えを早いうちに済ますことが必要です。しかし、入社後しばらくは先輩に教えてもらいながら言われたことを覚える、指示されたことをやる、という職場も少なくありませんので、受け身な考え方から抜け出すチャンスを逸してしまう社員もいます。率先して電話に出させることで、自ら考え行動する社会人マインドへの切り替えが早くできると思っています。
新人が電話に出ることには、ちょっと考えるだけでもこれだけの意味や効果がありますが、これを「ハラスメント」だと取り上げる私たち大人社会の風潮に疑問を感じます。自分たちで様々な決まり事をつくっておいて、部下に注意したり声を掛けたりするだけでも〇〇ハラスメントになりはしないかと怯え、中途半端な人間関係を続け、それでいて「社員が働かない」「業績が上がらない」と愚痴をこぼし、他人をやっかみ、足を引っ張り、お互いが不幸になる負のスパイラルを生み出しているのではないか、と。
昨年はコロナを言い訳にして色々なことが済まされたかもしれませんが、いつまでもそこに留まっているわけにはいきません。私たちは、学校を卒業して社会人になる日本の未来の担い手を強くたくましく教育できる大人であるべきだと思うし、そんな会社や体制を整えておく責任があります。新種のハラスメントに怯える必要は全く無いし、むしろ若い人に気を遣い過ぎて仕事を与えなかったり甘やかし過ぎたりすることの方がかえってハラスメントなのではないでしょうか。
今回は、電話ハラスメント騒動に思う私たち大人の在り方・考え方について書いてみましたが、皆様はどのようにお感じになったでしょうか?これからの時代を私たち大人がどう生き抜いていくのか?今は、その覚悟が問われている時だと思います。今こそ、会社の理念やビジョンを見つめ直し、強固な体制づくりをすべきなの時です!