「この2年の間、色々と試行錯誤してきましたが、ようやく新しい営業体制が整ってきました。変化に対応していかなきゃならないと頭ではわかっているものの、行動を伴うのは大変ですね。」
コロナ前には完全に対面営業だった会社の社長の言葉です。オンラインで商談をしたりWEBで集客したり…と、やり方を大きく変えて、ようやく社内に定着し、成果が出るようになったそうです。時代の変化に合わせてやり方を変えていく必要があるとわかっていても、実際に行動に移すことは大変です。私自身もこの2年間に大きく変わったことと言えばやはりオンライン対応が(強制的に)できるようになったことです。それでも当初は、「やっぱり対面が一番良い!」と思っていましたし、「大事なことほどリアルで伝えたい…いつか元に戻るだろう」とも思っていました。
しかし現実は違っていて、元に戻らないことの方が多いような気がします。「どうせ変わるならもっと早く変わっておけば良かった」と感じることもしばしば…。今週のコラムは、「変化を恐れず、楽しめる営業組織のつくり方」について考えてみたいと思います。
■動かない時間が長いことのデメリット
何事も初期対応が重要…これは保険時代に学んだ大切なことです。最初の対応を間違うと、その後関係がこじれたりグズグズと長引いたりしてなかなか解決できないからです。例えば、事故が起きてすぐに被害者に謝罪の連絡を入れることはとても大事なのですが、何と言われるだろうか…、ひどく叱られるのではないだろうか…と不安になり、なかなか電話を掛けられずにいる人が多いのです。また、その時の態度や話し方で大きく印象も変わりますし、その後の進展に大きな影響力を持ちます。日頃の行動もそれと同じで、「早く動いた方が良い」とわかっていることがあれば、できるだけ早く動くことが望ましいのです。
皆様は、この言葉を聞かれたことがありますか?
「古いチーズを早く諦めれば、それだけ早く新しいチーズを楽しめる。」
そう、名著『チーズはどこへ消えた?』に出てくる名言です。
この本の登場人物は2匹のネズミ(スニッフとスカリー)と、2人の小人(ヘムとホー)。彼らが苦労してやっと手に入れた「チーズ」がある日なくなってしまった…というところから始まって、やがて迷路をさまよいながら「新しいチーズ」を見つけるというストーリーです。
2匹のネズミ(スニッフとスカリー)は毎朝変わったことがないか?と辺りを調べていて、チーズが古くなっていたことも知っていたので、特に驚かず、すぐに新しいチーズを探しに飛び出します。しかし、2人の小人(ヘムとホー)は、いつも通りチーズがあるものだと思っていたのでとても驚きました。更にこの2人は、なぜチーズが消えたのか?と事態を検討し、どうしてこんな目にあうんだ?と腹を立て、チーズが戻ってくるのを待つ…という行動を取ります。
少し前から段々とチーズの量が減っていたことや、少しカビ臭いにおいがしていたことに気づいていたネズミたちと違って、「チーズはいつも、いつまでもそこにある」と思い込んでいた2人の小人は対応が大きく遅れたワケです。
更に、片方の小人(ホー)は、無なくなったチーズを探すのをあきらめて迷路に踏み出すのですが、ヘムは動こうとしません。「この事態は我々のせじゃない、誰か他の者のせいだ、探しに出ても迷うだけだ、ここがいいんだ、居心地がいいんだ…」と。
結局、いち早く動き出した2匹のネズミは迷路を行ったり来たりしながら新しい大量のチーズを見つけ、遅れて動き出したホーも迷いながらネズミたちに追いつき、新しいチーズにありつきましたが、ヘムは…。
■思い切って踏み出すきっかけ
この物語から私たちが学べることは何でしょうか?
・世の中は常に変化するので、それにいち早く気づくことの大切さ…
・この物語に出てくる「チーズ」が何を意味するのか?お金?仕事?…
・ネズミのような単純さも小人のような複雑さは誰もが持っているもの…
そのように書いてありました。私もその通りだと思って読みました。
私自身、好奇心旺盛に動き回る自分もあれば、「ここを動きたくない、変わりたくない」と執着する自分もあります。仕事のやり方や人との接し方も「自分流」のクセがあると思っています。クセというのは無意識にやるからクセなので、なかなか自分自身で気づくことは難しいものです。
その対策として、私は定期的に第三者のプロに意見をもらうことにしています。
凝り固まった考えをしていないか?
変化を他人のせいにしていないか?
新しい一歩を踏み出すことを恐れていないか?
…といった具合に。
自分自身で背中を押すことは難しいですが、私を大切に思ってくれる人であれば、適切な助言をくださいます。(耳に痛いのは覚悟の上です)
踏み出すきっかけは、他人の力を借りることはできますが、その機会をつくるのは自分自身です。
■変化を楽しめる営業組織のつくり方
営業のやり方も日々変化しています。私もオンラインセミナーに登壇してみたり動画を始めてみたりしていますが、どれもやってみないとわからないことばかりです。この2年間、試行錯誤を繰り返してこられた冒頭の社長がおっしゃっていたのは、「どうせやるなら“早すぎる”くらいのタイミングでやる」ということです。
動きが遅くなればなるほど、「やり方を変えたらコストがかかり過ぎるのでは?」「今までのお客様がどう思うだろうか?」「もし失敗したらどうする?」といったネガティブな発言が増え、変化を恐れる空気が蔓延してしまうと考えていらっしゃるそうです。弱音を吐いて落ち込むヒマなんて無い、ムダな時間だ…と。仮にうまくいかなくても、やった分は社内の資産になるし、社員の力になる…ともおっしゃっていました。
「古いチーズを早く諦めれば、それだけ早く新しいチーズを楽しめる。」
…みんながそう思える空気をいかに作り出すかが成功の秘訣のようですね。
皆様もぜひ、新しいチーズ探しに挑戦してみられはいかがでしょうか?
自社の棚卸しや新たな市場開拓を検討している社長のためのセミナーを開催しています。
ぜひご参加ください。