最近は、人手不足解消のためにお客様にタブレットでメニューを注文してもらう「セルフオーダー」システムを導入する店舗が増えていますね。先日も久しぶりに行った中華料理のお店がこのシステムを導入していて、誰も注文を聞きに来ない(以前は威勢の良い店員さんの掛け声が名物だったのですが)…静かな店内がちょっと物足りなく感じられました。
確かにこれによって、今まで5人必要だった店内が4人のシフトで回せるようになったり、日本語が苦手な外国人でも働きやすくなったりしたのでは?と考えられますが、同時に、ちょっと寂しい気持ちになるのは私だけでは無いと思います。
■日本の中小企業が抱える課題
今、中小企業・小規模企業の多くが人手不足に悩んでいて、中には、求人難(求人しても全く応募が来ない)で、廃業を考えなければならないところも増えていると聞きます。先ほどのように、ITを活用することで少人数でも現場を回せる体制をつくることができれば、人手不足の解消につながります。今後、少子高齢化によって日本の労働人口が減少していくことは避けられず、IT化は課題解決のための一つの方法になる…と思えば、多少の寂しさは致し方ないでしょう。
さて、そんな「IT」という言葉が世の中に登場したのはもう随分(20年以上?)前のことになります。今ではデジタル技術は様々な場面で使われていて、特にコロナ以降はその対策として注目を集めています。もはや企業規模の大小に関わらずIT化やデジタル化には関心を持たずにはいられない時代になりました。
ただ、現実として、中小企業・小規模企業にとって、デジタル技術の活用はなかなかハードルが高く、浸透しにくいことも事実です。特に、その技術に苦手意識を持つ人(年代)や、「やはり人間がやった方が確かだ」「AIなんかに任せられない(任せたくない、仕事を取られたくない)」と考える人たちの存在があることも確かで、彼らの意思によって企業のIT化が阻まれている…という現実もあります。
■IT化に力を入れても職場に浸透しない理由
このようなIT化の動きは冒頭のような飲食業に限った話ではありません。製造業でも建設業でも、農業も行政も…全ての業種において必須の取り組みとなっています。私が長年アナログ的に関わってきた「営業」の世界でも、やはり効率化のためにシステムを導入する会社が増えています。先日も、ある会社で出たのがこのシステムが現場で活用されていない…という話題でした。
「営業」というと、商談の開始からクロージングまでには様々なプロセスがあります。例えば、訪問前の情報収集や上司とのミーティング、提案書・見積書の作成、納期の確認などですが、その前工程(見込み客発掘)やアプローチをした後のリスト管理、納品後の顧客フォローなども含めると、非常に多様な業務があり、その処理プロセスが見えにくい仕事の一つです。この「見えない部分」をIT化で見える化することは、会社全体の効率アップと業績アップが期待できるのです。
しかし、この見えない部分は属人的でマニュアル化・均一化しにくいと考えられる傾向があり、「見込度合いは肌感覚で…」とか、「アプローチ後のフォロー先は営業に任せて…」という会社も多く、「やはりこの部分は人間でないと…」という思い込みにつながっていることがIT化の浸透を遅らせている原因の一つです。
■システムが押しつけにならないために
そして、IT化が浸透しない理由としてもう一つ考えられるのは、そのシステムが押しつけになっていないか?という可能性です。
先ほどの営業の可視化でいうと、これまで手書きの日報で「自分都合で」報告していた営業活動が、全て社内(上司)に筒抜けになるわけで、部下からすれば常に監視されているような感覚になります。
見込度合いが高い客先になぜ再アプローチしないのか?
なぜ偏った顧客への訪問・偏った商品の提案ばかりするのか?
どうしてこんなに時間効率の悪いルートで回るのか?
といった具合に質問されることを想像すると、怖くて入力ができないのではないでしょうか?
実は、「入力する時間が無い」「使い方がわからない」「まだ慣れていない」等々、システムの活用が進まない現実の裏には上司との信頼関係が構築されていないことが隠れていたりします。効率化のためのシステムというけれど、自分たちを監視するためのものではないか?と受け止められているということです。
システムは、あくまでも私たち人間が良い結果を生み出すための道具であり、それをどう使うか?を考えるのが私たちの仕事です。私たちには感情があり、感情は行動と密接に関係しています。いくら機械が効率的なルートや理想の数値をはじき出してきたとしても、その通りに動けないのが私たち人間なのです。
だからこそ、その感情をお互いが理解し合える信頼関係こそが一番大事だといえるのではないでしょうか?
あなたの会社のIT化、進んでいますか?
まずは社内の人間関係(信頼関係)を構築するところから始めてみませんか?
互いの信頼関係は、自分たちが何を生み出し、どこを目指していくのか?のモチベーションにつながり、自社の成長ストーリーを描く根幹となる大切なものなのですよ。