「うちの商品は日本で一番!という自信がありますが、これを本格的に海外で売っていくためにはどういう方法があるでしょうか?」先日、ある社長とお会いした時にいただいたご相談です。聞くと、本当に素晴らしい商品で、既に10年近く愛用してくれている外国人のお客様もたくさんいらっしゃるのだとか。ただ、「海外ではまだ“商売”にはなっていない」とのこと。自社の商品を使ってくれるお客様も、そして、自社で働いてくれる社員も、海外を視野に入れていかなければ…という話はあちこちから聞いてはいたものの、気がつけば10年以上も経っていた、なんていうことはよくあることです。
今までの商圏だけを見ていては先行きが不透明…そんな時だからこそ、社長は各分野の「専門家」と上手に付き合う必要があるのかもしれません。今週のコラムは、そんな「専門家」について考えてみました。
■中小企業の社長に「専門家」が必要な理由
私が駆け出しの営業マンだった頃に色々と教えてくださった経営者の皆さんもお年を召され、多くの会社で世代交代が進んでいます。先代の社長達いわく、「近年、我々中小企業に求められる経営は多角的で複雑になった。次々と移り変わる中で、経営者だけでその課題を解決することはなかなか難しい…」と。「これからの経営者は1人では解決しようとせず、それぞれの道に詳しい専門家と協力したり力を借りたりして、上手く可能性を広げていくべきではないか」とおっしゃいます。
そんな複雑になった課題とは…?
例えば、
・グローバル化への対応
今や私たち個人の生活(日用品や食品・サービス・嗜好品などあらゆるジャンル)を見ても、海外との関係を全く無視して暮らす…ということは難しくなっています。社会的にも、経済的にも国や地域を超えた結びつきが強固になり、それを視野に入れた経営を考えていかなければ「事業の成長」は難しいのではないでしょうか。しかし、それぞれ国が違えば文化も習慣も異なるため、その違いを理解した上でビジネスを考えていく必要があります。現在、日本国内ではうまくいっているビジネスも、全く同じやり方が海外で通用するとは限りません。国ごとの文化や経済、商習慣に詳しい専門家のアドバイスは、グローバルビジネスを考えるうえで必要不可欠です。
そして、
・人材不足による課題の置き去り
社内に様々な課題があるにも関わらず、一向に解決できない理由として人材不足が挙げられます。例えば先ほどのグローバル化の場合では、海外の言語や専門知識を持つ社員の採用や育成には膨大な時間とコストが必要ですし、市場の調査や開拓にも時間とコストがかかります。つい目先の仕事をこなすことで精いっぱいになってしまって、これらの大切な課題を後回しにしがちですが、放っておくと取り返しのつかないことにもなりかねません。まずは、グローバル化に向けた準備として、実務経験や知識が豊富な専門家に相談することが、効率的な課題解決につながるのです。
■求められている専門家とは?
冒頭の会社のように海外向けに自社商品を販売したいと考えた場合などは、当然、海外展開に強い専門家が必要になります。日本市場が飽和状態の中、新たな顧客を開拓するための選択肢として考えられるのが海外へ市場を広げることです。しかし、海外への展開はチャンスであると同時に大きなリスクも伴います。海外展開において、専門家に期待するものは次のようなことが考えられます。
- 現地の生きた情報
まずはどの国をターゲットとするかが非常に重要。現地の情報やニーズを把握して、現地にあった手を打つ必要がありますが、調査不足は事業の失敗を招きかねません。そこで、現地市場調査に長けた専門家や、その国の業界に精通した人物に依頼をして、現地に根差した戦略を考えていくことが必要不可欠です。私が関わっているベトナムでは、とにかく家族や友人・知人のつながりが強く、そういった人達を通じた紹介による人脈づくりや体制構築がビジネス成功の重要なカギとなっています。
- コミュニケーションの壁
海外とビジネスをする場合、商談、交渉、顧客対応、サービス説明など、すべて英語や現地の言葉で行われます。もちろん通訳をしてくれる人はいますが、こちらが言いたいこと(伝えたいこと)を全て理解してくれているわけではありませんし、何と翻訳されているかを知ることもできません。日本人同士なら伝わるようなあいまいな表現は海外では伝わりません。こちらの意思や目的をしっかりと伝え、商談相手の希望も理解して、お互いの勘違いや手違いがないよう進めていく必要があります。
- 商習慣・文化の違い
私たち日本の企業が海外進出を行う上で、やはり現地の商習慣や文化の違いを認識してそれに合わせていくことはとても大切です。日本では超有名な大企業がベトナムに進出した時にも、現地での知名度が上がるまではかなり苦労されたと聞いたことがあります。今、日本で成功しているからといってそのモデルをそのまま現地に持ち込んでもそのまま通用するとは限りません。例えば、大卒の初任給が4万円前後といわれるベトナムで日本の高級商材を販売していこうと思えば、やはり現地の経済状況や生活スタイル、考え方などを理解し、現地に合わせることが重要です。
■活用する側、される側…両方の視点で考える
現在、弊社では2か月に1度、現地の視察や大卒人材との面接を希望される社長たちと一緒にベトナムに行っています。そこには、業種や規模・地域を問わず様々な経営者が参加してくださっています。
中には、専門家を活用する側の立場で参加された会社が、そのツアーのご縁がきっかけで自社のノウハウを提供する側になった…という事例もあります。海外での出会いは、日本国内でのそれとまた違う展開になるからおもしろいのです。
経済が動き出しているこのタイミングに、あなたもぜひご自身の目でベトナムを見てみませんか?次回は9月18日から行ってきます。(ご興味のある方はぜひお気軽にお問合せください)