応援コラム

第305話 競争か?共存共栄か?

 

「現在は、他社との契約が長く続いておりまして…」

「実は今、ちょうどそのサービスを検討しようと思っていたところで…」

 

新たな顧客開拓の営業活動をしていて、提案先のお客様の口からこのようなセリフが飛び出したとき、あなたやあなたの会社の営業社員ならどう返すでしょうか?

 

「いや、うちならもっと良いご提案ができますよ!」

とか、

「それでしたら、ぜひうちのサービスをご検討ください!うちは他社とは違って…」

 

といった具合に、チャンス!とばかり前のめりになって自社の商品やサービスをアピールしようとしないでしょうか?…実は私もそうです。大事な時間と経費を使ってようやくこの商談にこぎつけたのだから、何としても契約して欲しいと思うのは自然のことだと思います。

 

ただ、この時に、

 

「それは素晴らしいですね」

「ぜひ機会があれば弊社にもお越しいただいて施設をご覧ください」

 

と言える余裕があるとしたら、提案される側の気持ちは大きく違ってくるのではないでしょうか?…実はこの10日間、ひょんなことからベトナムから来日したお客様に同行させていただく機会があり、「日本」という異国で熱心に営業活動を行う彼らを見て深く学ばせていただきました。あまりに濃く、気づきも学びも多かった10日間でしたので、自分自身の振り返りを含め、今週のコラムはそれについて書いてみようと思います。

 

事の始まりはベトナムのビジネスパートナーのひと言…もう5年以上前から付き合いのある、信頼できる仲間です。

 

「今度、私の会社の社長が日本に出張に行きます。私も営業担当兼通訳として同行する予定ですので、日本でお会いできるのを楽しみにしています」と。

 

この2年半コロナで日本への出張ができなかったので、いよいよ営業活動も活発になるのだな~くらいに思っていたのですが、その後、その会社のグループの副会長も同行することになったとのこと。近く上場を予定している、ベトナムではかなり大手の会社…せっかくの機会なので、私の大切なお客様とも面談の機会を頂きたいとお願いしてみたところ快諾をいただいたので、何件かアポイントを入れることにしました。そのうちに、「せっかくの機会だから…」はどんどんエスカレートしてアポイント先は15社ほどに増え、10日間のスケジュールはほぼ同行する流れになりました。

 

…と、ここまでは良かったのですが、直前になって、営業担当兼通訳として同行するはずだった彼が来日できないことになり、日本語が全くわからない副会長と社長が2人でいらっしゃることに!?

 

え~っ?!

 

とりあえず、急ぎ調達した初対面のベトナム人通訳さんと羽田空港で落ちあい、2人を出迎え、怒涛の10日間がスタートしたのです。

 

このグループは、アジア各国でビジネスを展開しているそうですが、2人は今回初めての日本。私も一度しか面識の無い彼らと同行することになり、どうなることやら…とお互いに心配していましたが、何となく良い感じでスタートしました。そんな彼らと同行している中で感じたのが、冒頭の「余裕ある会話の力」です。

 

お互いの会社紹介や情報交換をしている中で、

「今は他の業者と付き合いがあるし、特に困っていない」

などと言われれば、

「うちの会社のサービスは他社とは違うのでぜひ聞いてほしい」

という気持ちになるし、

 

「導入を検討しようと思っている」

と言われれば、

「それではぜひわが社のサービスについて聞いてください…」

と言いたくなるものです。

 

私もこの5年間ベトナムに15回以上通う中で、知らない土地で営業活動を行う大変さを味わってきましたが、最初の頃は自社のアピールをすることに必死だったのを思い出します。これは、本気で営業活動をしてきた方なら皆さんご理解いただけると思いますが、うちのような小さな会社が1,000万円単位の投資をして海外ビジネスに挑んでいるのですから、何とか早く回収しようと、とにかく売り込むことで頭がいっぱいだったのです。長年の営業のクセで、「他社より優位なことを探してアピールしよう」とか、「他社を負かして勝ちにいこう」という心理がスキあらば働いてしまうのです。もう無意識レベルで…。今回、同行した彼らの会社の規模はうちとは比べものになりませんが、それでも早く実績を上げたい気持ちに変わりはないはず。

 

しかし、そんな彼らの余裕ある態度を見ていると、「競争」とは他社を負かすことなのか?という疑問がふと湧いてきました。

 

以前、何かの本で読んで大切にメモをした中に…

 

________________________________________

 

お互いが日々行う競争というものは、戦争のように相手を倒すためのものではなく、共存共栄のための競争というか、ともに成長し発展していくためのものでなければならないと思うのです。

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という言葉がありました。調べてみると、あの松下幸之助さんがおっしゃった言葉のようです。

 

競争とは、相手を負かすためのものではなく、お互いが共に成長することを目的に、自らに対して挑戦すること…そうおっしゃりたかったのかなと私は理解しましたが、まさしくその通り。私たちが日々行う営業活動はこうあるべきだと思います。

 

会社の規模や技術、人材、資金力など、様々な点で大手にはかなわない中小企業ですが、だからこそ、お互いが協力して共に生きていける道を探す必要があるのではないか?互いを負かすことばかりに神経を尖らせるのではなく、どうすれば一緒に成長発展できる未来が描けるのか?…それを模索することが、日本の中小企業の次のテーマなのではないか、そんなことを感じた10日間の活動も無事に終わり、今日から通常運転です。

 

海外とのビジネスも、日本国内(おとなり同士)のビジネスも、まずは相手との関係構築を第一に、共存共栄を模索していく必要がありそうです。

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