「ウチのブランドイメージをどう作って行こうか…わが社の今後の大きな課題なんです。」
数年後に社長交代の時期を迎える、ある後継者からのご相談です。父親である現在の社長を含め、先代から受け継いで来た“老舗”という会社のブランドはあるものの、多分、今後は何かしら変えて行かなければ厳しい戦いが待っているだろうと考えるこの後継者の頭の中は、きっと、「何からどう手をつけて行けば良いんだろう」という真っ白な状態…私はそのようにお見受けしました。
「うちもブランド化をしていかないと…と、思っちゃいるんですがね。」
先日、経営者が集まる会でもこのような会話が飛び交っていたのですが、こちらも先程の後継者と同じく、どうやってブランドイメージを作って行こうか?と必死のようです。「自分たちの会社はどう見られているのか?」また、「どう見られたいのか?」…自分の会社なのに難しい?いや、きっと自分の会社だから難しいのでしょうね。
私は仕事柄、毎日多くの経営者にお会いする機会があるのですが、業種も規模も地域もバラバラ、当然色々なタイプの社長様がいらっしゃいます。いつもきれいにアイロンのあたったシャツを身に着けている方、丁寧な言葉づかいをする方、常に新しいことに挑戦している方…こういった方とお話しをすると、「きっと社内もキレイでサービスも丁寧で、良いものを提供されるんだろうな〜」と想像してしまいます…勝手に(笑)。一方で、その逆だった場合、「多分、業績もそれなりなんだろうな〜」と、余計なお世話ですがそんな風に想像してしまいます。これまた勝手に。。
では、商品やサービスはどうでしょう。私も仕事を離れると一人の消費者、実は結構買い物好きな方です。電話やネットでこまめに問い合わせをしたり、大切なものは必ず自分の目で見て、耳で聞いたりして判断します。その時の判断基準はどこにあるのか?そのモノ自体の良し悪しは当然ですが、人によって決め手となるポイントはバラバラ。同じ人でも時と場合によったりするので非常に厄介な部分ですが、多くの場合、それを提供する“人”や”会社”とセットでイメージされます。私も自分なりの基準があって、「この人なら」とか、「このお店なら」と勝手に決めています。
お客様が「この会社なら」とか「この商品なら」を判断する時、大きな鍵を握るのは”伝えるメッセージ”です。それを受け取ったお客様は勝手にイメージをつくり上げていきます。当たり前のことですが、ここがブランディングの難しいところで、こちらが伝えたいことがうまく伝わっているかどうかは相手の頭の中を覗いてみないと分からない…厄介な仕事です。しかし、一足飛びにはなかなか行きませんが、確実に伝え続ける必要があり、具体的な言葉に落ちていなければなりません。
冒頭の後継者の方とお話しを進めていくと、現状の社内には課題がたくさんあるのだとか。例えば、十数名いる営業マンの方向性がバラバラ(目標やそれに向かう具体的な手法・ツールなど)だったり、社員同士のコミュニケーションがうまく取れていなかったり、結果、売上が伸び悩み利益が増えない状況が続いている…と。このまま続けていても会社の成長が期待できず、辞めていく社員もチラホラいるようです。仮にこのような会社を見た時、お客様にはどのようなメッセージが伝わり、どんなイメージができあがるのでしょうか?残念ながら決して良い印象は無いはずです。
しかし、実は、それらを払拭できるようなどこかの何か素晴らしいブランドイメージを持って来れば会社が一変する、と考える経営者も少なくありません。ロゴやパッケージ・ネーミングを変える、ホームページをリニューアルする、新商品を発売する…などがその代表的なものではないかと思いますが、勿論これらも大切な手法の一つです。しかし、会社のブランドをつくっていきたい、イメージを変えて行きたい、と本気で考えた時に一番にやらなければならないことは、「目の前の現実をしっかりと受け止め、思考と行動を変えること」です。社員の向く方向がそれぞれバラバラで、誰もワクワク仕事をしていない、他社との比較や競争に疲れ切った社員、時代遅れの商品や販売手法を続け何の進化もしていない…これらの現実から目を背けず、しっかりと事実を見つめることです。どこかの誰かが格好良いものを考えてくれることがブランディングではないのです。
経営者の皆さま。御社を外側から見てみたことがありますか?お客様の心の声に耳を傾けていますか?都合の良い解釈と言い訳に明け暮れていませんか?お客様は事実を見て、直感で感じ、「良いな〜」と思うものを選びます。選ばれるためのメッセージを考え、つくり、率先して進化していかなければならないのは経営者の皆さまなんですよ。