「次の3年間の中期計画を立てようと思っているが、社内の意見がなかなかまとまらなくて…」
「次の人事はこのように考えているんだけれど、なかなか承諾してもらえなくて…」
「長年働いてくれている部下にはとても期待をしているのだが、一体何を考えているのか…」
若い頃、「会社の社長」と聞くと何か雲の上の人のような、すごい人、近寄り難い人と言うイメージがありました。会社というのは社長が一番偉くてみんなが言うことを聞いてくれて、威張って座っている人というような印象を持っていたのですが、これまでお会いした社長様の中には冒頭のような事を口にされる方が多くいらっしゃいます。私自身は小規模の会社で働いた経験の方が長く、ある程度の規模までは社長の一存で会社の方針が決まるものだと思っていましたが、最近ご相談にいらっしゃる方の多くは、鶴の一声で会社をグイグイ引っ張ると言うよりは、少し戸惑っていらっしゃるような印象が意外に強く、
「以前は社員も少人数だったから、家族の顔まで全部知っていましたがね…」
「新入社員の面接から新規の顧客開拓まで、昔は全部自分がやったものだが…」
「取引先が代替わりをしたらしく、以前では考えられないような注文をつけられて…」
など、長く安定的に経営をしてきたおかげで以前に比べ規模が大きくなったけれども、社内の体制がそれに伴っていない事に悩む社長様とお会いする機会が多くあります。これまでは、“良いもの”を“たくさん”売れば売上も上がって会社も大きくなり社員も増えたが、今の時代、周りを見渡すと「差別化」「ブランディング」と騒がれ、何やら少し様子が違うぞ?これは、今のうちに自分達の何か「キラリ」と光るものを見つけ出し、他社と差別化できる体制を整えておかないと厳しくなりそうだぞ、という社長様の心の声なのかもしれませんね。
経営者の悩みというと、お金や人材など多種多様な難題があるように見えますが、実はお話ししていくと多くの社長様の口から出てくるある共通のキーワードがあります。それは、
「うちの会社は、これから“何を”売りにして行けば良いのでしょうか?」…です。
自分自身がトップセールスだった頃にはきっとこんなことを考える必要も無かったでしょうが、若い営業部隊が新規開拓をするようになると、飛び込んだ先の企業から必ず聞かれる事は、
「…それで?御社は何が出来るのですか?」
です。
「あなたは何者なのか?」
「何しに来たのか?」
「あなたの会社には何ができるのか?」
「となりのB社とはどこが違うのか?」
「あなたの会社にお願いするメリットは?」
・・・と矢継ぎ早に聞かれ、答えられない営業マンはひたすらに商品説明に終始し、門前払いをくらう、もうほとんどイジメです。
これが新米営業マンであれば尚更ですよね。これまで長年付き合いのある会社へのご用聞き営業でも、どうやって顧客サービスを提供し満足に繋げるかが大きな課題ですが、新規開拓となれば更に大問題です。
「うちの会社の“売り”は…」ここが明確になれば、先ほどの中期計画も、人事や部下指導も…少し光が見えて来ませんか?
経営者の皆さま。他社との差別化の第一歩は、自社の強みという原石に磨きを掛け、“売り”という商品に磨き上げることからです。強みがあるだけでは宝の持ち腐れになりますよ。