私の顧問先は、前職からの流れで製造業と建設業の企業様が多く、プラス金融業、サービス業と続きます。ここ最近売上が順調に伸びている会社も多くあり、それ自体は大変喜ばしいことなのですが、その反面、キャパを超える仕事量に追われ、社員の残業が増えたりミスが増えたり・・・と悩みのタネも尽きません。今日は、そんな経営者の悩みのタネについてお伝えしたいと思います。
現在日本には約250万社の中小企業があると言われますが、これは大きく2つのグループに分けることができ、それぞれの特徴により悩みの種類も違ってくるようです。一つは、値段と数量を相手が握っている“受注型事業”で、「1万個作ってくれ」と言われればそれ以上は作れない、安定的だが利益率が低いというのが特徴の受身な事業です。製造業や建設業の多くはこれに該当します。そしてもう一つは、値段と数量を自社が握る“見込型事業”で、商品と売り方が命、当たれば儲かるが不安定なハラハラドキドキ体質とでも言いましょうか、小売業やサービス業などがこれに該当します。
どちらの事業体質も一長一短ありますが、最近特にご相談が多いのは、現場が悲鳴を上げるほどに無理をして仕事を引き受けなければならない、という受注型事業の経営者様のお悩みごとです。親会社の機嫌ひとつで経営が大きく左右されてしまうため仕方ない一面もありますが、無理を聞いて頑張った結果、少し業績が上向きになってくると今度は単価を叩かれてしまう・・・という厳しい環境下にあり、何とかしたいと考える経営者様から、見込型事業への挑戦についてご相談をいただきます。
自分達で商品開発が出来たら・・・
自分達で値段も顧客も決める事が出来たら・・・
そう考える経営者様の気持ちは痛いほどわかりますが、見込型事業へ挑戦するその前に、考えるべき大切なことがあります。それは、『今の顧客と商品を知り、それらをどう広げるかを考えることが先決である』ということです。なぜなら、そこにその企業の強み、商品の良さが隠れているからです。今の顧客に売っている商品を他の顧客に売っていく『新規開拓』をするには、企業の強みがアピールできなければなりませんし、既存顧客にプラスαの提案で売っていく『クロスセル』のためには商品の良さを十分理解していることが必須です。そしてこれこそが、見込型事業へ挑戦する大切な準備の第一歩となるのです。
しかし、現状に満足できない経営者は、とにかく新しい顧客に新しい商品を販売することで、現在の経営環境から抜け出したいという気持ちが強く働く傾向にあり、「今の顧客では売上は頭打ちだ」とか、「今の商品では魅力に欠ける」という思い込みのもとに、今まで取引の無いアカの他人に、今まで売ったことも無い未知の商品を売るという険しいイバラの道に進んでしまいがちですが、これはあまりオススメできるものではありません。
値段と数量を自社が握れる見込型事業への挑戦を考える今だからこそ、まずは現状を分析し、ありったけの強みを抽出することで、イバラの道ではなく「王道」を歩んでいきませんか?