「長年勤めてくれている社員には本当に感謝していますが、ウチの会社はほとんど教育らしいことを何もしてこなかったので、特に営業については早急に何か考えて行かなければなりません…」
30年以上社長の右腕として活躍して来られた、ある製造会社の部長様からのご相談です。これまで、社長のメガネに叶う優秀な営業社員を採用してきたこともあって、特別な教育をしなくてもここまで業績を伸ばすことができたそうですが、得意先の高齢化や消費者の嗜好の変化、競合との差別化の限界など、社員任せだけでは売れない時代になった、薄々そんな気はしていたが、やっぱり…だそうです。
人の育成には時間もお金も掛かる、それは良く知っていても目先の売上優先で、ついつい先延ばしにしている間に遂に売上を前年通りに確保することすら難しくなってしまっていた、いつかこんな日が来ると思っていたけれど、とうとうそれを実感する日がやってきたのです。
業務が少し落ち着いたら…
人手に少し余裕が出来たら…
資金にゆとりができてから…
社長が交代したら…
取引先の担当者が変わったら…
物事をやらない理由は世の中にたくさんあって、これらを並べ出したらキリがありませんが、やらなければならない理由はたったひとつしかありません。それは、「会社を成長させるため」です。
先ほどの部長様も、毎月の営業数字を追うごとに、毎回の会議の空気を感じるごとに、“その時”が近づいていることを肌で感じていたはずですが、それをやらずにここまで来た理由は、単純に「目先の売上にしがみついていたから」です。
経営者にとって、売上が下がる・現金が減る又は入らなくなることは非常に怖く、できれば避けて通りたいことです。社員の教育をしていかなければならないと思いつつも、仕事が減ったり収益が減ったりすることの恐ろしさに怯え、ついつい顧客のニーズを優先させ、納入先の意見に惑わされ、価格競争に振り回されたりしている間に、すっかり会社の経済的な体力が落ち、社員の士気も下がり、ヘタをすると経営者の報酬まで下げてしまっていることもあります。新規の顧客を取り込む事や既存の取引先を大事にする事、また、世間一般的な相場を見ながら売れる時に売れる値段で出し切るタイミングなどももちろん大事なのでしょうが、どんな時代が来ても荒波を一緒に乗り越えてくれる社員を育てて行くことが一番大事だと私は思っています。世の中には、会社を潰さないためにやむなく行われる大規模なリストラや、赤字経営から抜け出すために必要な経費の見直し…そこから派生する給料カットなど致し方無い場面もあるでしょうが、基本的には、「社員がこの会社に入って良かった」と言ってくれる会社づくりが一番大切だと思っています。
社員なんて何を考えているかよくわからないという経営者も中にはいらっしゃいますが、たくさんの社員に囲まれている経営者は、「社員に恵まれてしあわせだ」と言うでしょうし、そうでない経営者は「社員など居なくても会社は回る」と考えるでしょう。しかし、人として生まれ、一企業の社長になったからには、一人でも多くの雇用を生み出し、その家族や地域の発展に貢献することが求められているはずです。規模は小さくても社会の役に立ち、少しずつでも利益の出せる会社に成長させ社員を大切にすることが大事なのです。そして営業社員とは、そんな会社をお客様に紹介して歩くことが仕事で、決して安売り、もの売り、タタキ売りをすることが彼等の仕事ではありません。
経営者の皆さま。御社の営業マンは何を売って歩いていますか?胸を張って売れる会社づくりをしていますか?営業社員の教育を始めると必ず問われるのは貴方の会社の“価値”ですよ。