「競合他社の良いところや、逆に至らないところはよくわかる…」
「他人の優れているところや劣っているところはよくわかる、
わかるどころか特に悪いところばかりが目について仕方ない…」
という人、多いのではないでしょうか?
自社や自分自身のことはよくわからないが、相手のことはよくわかる(気がする)ということは誰もが思うところです。
私達は、自分自身を客観的に見る目を持ち合わせていないため、ついつい目の前で起きる事象や他人にばかり目を向けてしまいがちですが、営業活動も部下の指導も、もっと言えばご近所付き合いや夫婦の会話も相手の言動にばかりフォーカスして、悪いところばかりを指摘し合っていては決してうまく行かないものです。
中には、何か相談するともっともらしいアドバイスを無責任に返してくる人もいますが、そう言う人でも、自分自身のことは意外とわかっていないもので、「じゃあ、あなたはどうなんだよ」と言い返したくなるコトもしばしば。このようなお付き合いを続けていても、互いにどこかで距離を感じ、やがて関係は破綻してしまいます。
実は営業の現場でも似たようなことが日常的に行われています。他社を訪問した営業マンが、「あそこの担当者の雰囲気は何か暗くて好きになれない」という理由で訪問しなくなったり、「あの経営者は性格がキツくて自分とは合わない」という思い込みで見込みリストから勝手に削除してしまったり、また、「自分は一生懸命相手の話しを聞いて、良い提案をしたのに契約してもらえなかった。きっともの分かりが悪い人なんだ」と、相手のアラばかりを探して行かない理由をつけ、自分が不足しているところや見方・やり方を変える努力は一切していない…ということはよくあることです。これは、経営者にとっては大きな損失です。
しかし、私も仕事柄、多くの企業の現状分析や経営者の自己分析のお手伝いをさせていただきますが、自社(自分)自身を川の向こう岸から眺めるように、冷静で幅広い視野を持つ目を養うことは至難の業です。何を隠そう、私自身も常に第三者の力を借りながら自己分析を続けています。
経営者に、「御社の営業マンがお客様のところでどんな姿でどのような会話をしているかご存じですか?」と聞くと、意外に多くの方が「知らない」「多分こんな感じだと思う」とおっしゃるのですが、営業マンは大事な会社の稼ぎ頭。「知らない」ではちょっと無責任です。ぜひ、同席したり、ロープレをさせたり、会話を録音させたりしてチェックしてみてください。もしかするとビックリするような営業をしているかもしれません。多くの売れない営業マンは、ひたすら自分が売りたい商品の話しをします。そして相手のメリットを訴え、他社の成功事例を話します。決してそれがいけないワケではありませんが、私が考える究極のおもてなし営業とは…
「相手の鏡になりきる」ことです。
鏡になりきる?それってどういうこと?
それは、相手が無意識に発している言葉や仕草、これまでの失敗やこれから望むこと、会社として困っていることや他社の羨ましいところ、逆に目につくことや気になること、気に入らないことなど、できるだけ相手の立場になりきって再現してあげることです。営業の現場で必要だと言われる傾聴姿勢ですが、これはただ相手の話しを良く聴いてあげるだけでなく、できるだけリアルに相手に返してあげることができるようにするためのスキルです。
お客様も人間です。相手がどれだけ凄腕の社長様であっても、100パーセント自社(自分)を分析できている人はいません。しっかりと聞いて、相手が本当に望んでいることや困っていること、また、このように見えます・感じますということを素直に伝えてあげることも大切です。“聴く”営業とは、ただ良く聴いてあげれば今度はこっちのセールスね、というものではなく、相手を自分に写すくらいに伝え返すことで、本当に必要なものを見せるテクニックだと私は思っています。それができ初めて攻めの営業に転じるのです。
経営者の皆さま。御社の営業マンはどのようなスタイルでお客様と接していますか?“お客様の立場に立って”とか、“お客様の目線で”とか言っていませんか?“お客様になりきってそれを相手に見せてあげること”こそが究極のおもてなし営業だと思いませんか?